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  • 「マネジメントスキル=ヒューマンスキル」。それは学習して身につけるべきもの。

    エンジニアのキャリアのひとつの方向性として「マネジメント」というパスがあります。経営に関与し、事業や組織の成長をリードしていくのがマネジメントの役割ですが、多くの日本企業の場合、あるレベルまで昇格すればマネジメントができるのは当然とばかりに、いきなり部下を持ってチームを率いるケースが多々見受けられます。しかし、マネジメントの役割を担うにはコミュニケーションやロジカルシンキング、コーチングなど求められるスキルがいくつもあります。これらには人として生きていけば自然と備わるものばかりではなく、意識して能力開発しないと身につかないスキルもあります。マネジメントを務めるにあたっては、本来はこうしたスキルをきちんと学習する必要があるというのが私の考えです。

    一方で、マネジメントを志向しないエンジニアの方もいらっしゃるかと思います。しかし今後は、すべてのエンジニアにマネジメントのスキルが求められる時代になっていくと考えています。先ほど、マネジメントにはコミュニケーションやロジカルシンキング、コーチングなどのスキルが必要だとお話ししましたが、これらは言い換えれば「ヒューマンスキル」もしくは「ソフトスキル」と呼べるものです。

    なぜ、ヒューマンスキルがこれからいっそう重要になっていくのか。いまやシステム開発は一人では完結しません。チームで動くのが常であり、そこにはコミュニケーションが求められます。チーム内で意見が対立した時は、相手を理解して自分の考えを述べ、総意を導いていかなければなりません。それを実践するにもある種のスキルが必要であり、こうした力を普段から養っていくことが肝要です。

    たとえ技術のスペシャリストを目指している方でも、より重要な案件を担いたいと思えば、周囲を巻き込むヒューマンスキルが欠かせません。事実、外資系企業などで“フェロー”といった専門的なポジションに就いている方は、実はヒューマンスキルにも優れている人ばかりです。いくら技術者として天才的でも、独善的で周囲を引きつけられないようでは、もはやインパクトのある開発はできないといっても過言ではありません。

  • このコードでユーザーにどんな価値を届けるのか。それを常に意識して開発に臨む。

    エンジニアがヒューマンスキルを高めていくことは、結果としてプロダクトの価値を高めていくことにも繋がっていきます。いまソフトウェアサービスの開発現場には「プロダクトマネジメント」という考え方が浸透しつつあります。

    プロダクトというのは、人に使われて初めて価値を生みます。人に使ってもらうためには、そのプロダクトがユーザーの課題を解決するものでなければなりません。しかし、ユーザーの課題を発見して抽出するというのはとても難度の高い作業であり、ただ「困っていることはありませんか?」とダイレクトに尋ねても、潜在的に抱えている問題というのは表には出てきません。そこに想いを巡らせ、ユーザーにどんな価値を提供していくのかを考える「経営視点」で開発することが重要であり、それを果たすためにはやはりヒューマンスキルが大切となります。

    先日のイベントで館野さん(※)がおっしゃっていたお話ですが、チーム全員がそうした姿勢で開発に臨むからこそ、真に使われるプロダクトが生まれるのであり、だからこそすべてのエンジニアがヒューマンスキルの向上、ひいては経営視点の獲得に努めていかなければならない。そのための第一歩として、コードを一行一行書く上でも、ユーザーに何を届けたいのかを常に考えてプログラミングしてほしい。それを積み重ねることで経営視点も身についていくと。
    (※3/6 クライス汐留アカデミー WAmazing 共同創立者 取締役CTO 舘野 祐一氏の発言より)

    経営視点というとちょっと荷が重いように聞こえるかもしれませんが、要はプロダクト志向、サービス志向で開発するということです。多くの人に喜んで使っていただけるものを創り出せば、おのずと収益はついてくる。自分が創っているものが、本当に社会のニーズを満たしているのか。本当にユーザーの課題を解決しているのか。エンジニアとしてテクニカルなスキルを伸ばしていくことももちろん大切ですが、プログラミングはあくまでも手段に過ぎません。その先にある本質をしっかりと捉えて開発できるエンジニアが、これからの社会では大きな成果を残せるのではないかと考えています。

  • ヒューマンスキルは後天的に高められる。ビジネス書を読むことも有効な方法のひとつ。

    では、これからのエンジニアに求められる、ヒューマンスキルを中心としたマジジメントスキルを習得するためにはどうすればいいのか? 取り組みやすいところで言えば、ビジネス書を読んで先人の知恵を吸収することもひとつの有効な方法だと思います。たとえば、マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーの著書の中にも、技術者向けにわかりやすく書かれているものもあります。また「イノベーションのジレンマ」を著したクレイトン・クリステンセンの本も、イノベーションの起こし方など有益な知見がたくさん得られます。

    クリエイティビティというのは先天的なものと思われがちですが、実はそうではなく、後天的な努力によって習得できるということが最近の研究で判明しています。こうした優れた本を読んで学ぶことは、その近道にもなる。あとは、エンジニアを対象とした「SOFT SKILLS」というそのものズバリのタイトルの本も個人的にはお勧めです(副題「ソフトウェア開発者の人生マニュアル」/ジョン・メンソズ著・まつもとゆきひろ解説)。

    昨今、国内のIT業界ではエンジニアの争奪戦が起きており、報酬水準も上がっています。しかし、ただ与えられた要件に沿って高品質なソフトウェアを作り上げる技術者は、もはや必要とされていません。特に昨今は多くの有力な企業が競争力強化のためにITを内製化する方向にシフトしており、そこでは開発者自らがユーザーを理解し、プロダクトに価値を生み出す視点がなければ通用しません。

    さらにアジャイル開発が主流になりつつあるいま、ヒューマンスキルを備えたエンジニアでなければ生き残っていくことすら厳しくなるかもしれません。しかし、裏返せばヒューマンスキルに長けたエンジニアは、自分が創ったものが多くの人の役に立ち、喜んでいただけるチャンスがより大きくなっているということでもある。そんな技術者本来の醍醐味を堪能し、社会に大きな影響を与える「ものづくり」を成し遂げるためにも、エンジニアのみなさんにはヒューマンスキルの向上を常に意識してほしいと思っています。

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