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2018 Jun 20

Google、Microsoftの戦略にみる テクノロジーの新潮流とビジネスへの活用を徹底議論!

登壇者

クライス&カンパニー 顧問 及川 卓也

インフラジスティックス・ジャパン 代表取締役 東 賢氏

日本マイクロソフト グローバル ブラックベルト テクノロジー スペシャリスト 井上 章氏

日本マイクロソフト テクノロジーセンター センター長 澤 円氏

KDDI 理事 ソリューション事業企画本部長 藤井 彰人氏

クラウド導入において、企業に求められる技術戦略とは?

及川

まず「クラウド」の話題から始めたいのですが、もはや多くの企業の間でクラウドは当たり前という風潮になりつつあります。クラウドへの移行は必然なのでしょうか?

Microsoft社内のインフラについてお話すると、業務アプリケーションの93パーセント以上はもうクラウドなんですね。

IT環境を考えた場合に「クラウド以外はもはや使う必然性がない」という完全なコンセンサスがある。そして、同じ理屈はほとんどの会社に当てはまるんじゃないかと思います。

ただ、私がおつきあいしている大企業のクライアントで言えば、社内のクラウド化が50%を超えている企業はまだ一社もありませんね。

藤井

確かに現実はまだまだ惨憺たるものだと思いますね。「当社はかなりクラウド化が進んでいます」と言っても、その実は統合仮想サーバーだったりする。それはクラウドとは呼べない。KDDIもそうです。

まだまだオンプレミスが残っていますが、それでも情報系やコラボレーション系はクラウドのSaaSにどんどん移っていますね。AWSやAzure、GCPなど本当にいろんなクラウドサービスを使っていますし、VMで立っているものもたくさんあります。

及川

世の中の流れとしては、どの企業もやはりクラウド化の方向に進んでいくのだと思われますが、その際、どのような技術戦略をもって実行するのが企業側としては望ましいのでしょうか?

藤井

それぞれの企業で選択基準があると思います。そのクラウドサービスのSLAが求める基準を満たしているかとか……でもオープンなクラウドサービスは急に停止する可能性もあるので、それに依存しすぎるのはリスクがあるかもしれません。

ただクラウドを導入することだけを目的にして外部に丸投げすると、結局ベンダーの餌食になって余計なコストを強いられることになりかねない。

しかし、ビジネスで実現したいことが明確で、成功とみなすステージまでのロードマップがきちんと描けるのなら、そのフェーズごとに最良のパーツを揃えているクラウドを自ら選べばいい。

既存のシステムとの相性とか、あるいはそれを創り出すディベロッパーのケイパビリティとか、そうした要素をパズルのように組み合わせていくと必然的に選ぶべきベンダーが決まっていくと思います。

そのためには、社内のシステム全体を理解して適切な判断ができるアーキテクトが、これからどんな企業においても必要とされる時代になっていくのかなと思いますね。

多彩な人材の活用が、企業のトランスフォームを加速する。

及川

先ほど澤さんから、ベンダーロックインを避けるために社内で自前のアーキテクトを抱えるというお話をいただきましたが、普通の企業ではなかなか難しいことだと思います。その点はどうお考えでしょうか。

アーキテクトを担える人材とどのような契約形態を結んで、そのプロセスを乗り切っていくのかということだと思うんですね。

いわゆる「助っ人」のような形で期間限定で参画してもらったり、あるいはそのフェーズごとに最適な人材をどんどんパートタイムで採用していくようなスタイルが、きっとこれから必要になってくる。

シリコンバレーでは、もはやこれが当たり前になっています。数時間ずついろんな企業にコミットしていって、自分の能力を最大限に発揮するという働き方がすでに定着しているんですね。日本でもこうした形態を受け入れていかないと、トランスフォームするのにものすごく時間がかかってしまう。

藤井

私は、日本のカルチャーに合わせて日本の企業をうまく変えていくことが大事だと思っています。

アメリカと日本では、もう中・高・大学の教育のシステムから違うわけです。向こうはディスカッションする文化を早くから身につけていますから、新しいテクノロジーが現れると、まだ生焼けだろうとお互いに刺激し合っていいものを作っていく。

だから、ディベロッパーカンファレンスが主流なんですね。でも。我々日本人はどちらかというと、提示されたものを勉強し、そこから新しい知恵を出していく文化の中で育っている。だからそのままアメリカのやり方をそのまま持ち込むのは、なかなか難しい部分もあるのかなと。

及川

日本に合うモデルを創って、ゆるやかな移行を進めていくのも必要だということですね。私自身の持論としては、やはりもっと人材流動性を高めていくべきじゃないかと考えています。

日本の人材流動性がなかなか上がらないというのは、実際のところ、マネジメントがまだ稚拙であることも問題としてあると思うんですね。

日本ではマネージャーのことを「管理職」と言うじゃないですか。管理というのは、マネジメントからするとごく一部のタスクでしかない。本当にマネジメントができるプロのマネージャーがあまりにも少なすぎるので、目の前に部下がいないと管理ができない、あるいはテンプレート通りじゃないと評価ができない、ということになってしまう。

だから、尖った人材が外部からやってくると、マネージャーがその人たちを扱えず、能力を発揮させられないのが現状ではないかと。でも、嘆いていてもしかたがないので、これを変えていかなきゃいけないと思っています。

AIやIoTを学ばなければ、次世代のモノづくりはできない。

及川

AIについてはお二方はどうお考えですかは? こちらもいま非常に関心の高いテーマですが…。

AIというと、たとえば画像認識やテキスト認識のテクノロジーをどう活用するかという視点でと考えがちですが、私はAIを導入する前にまず、その企業でどのように人が動いているのかという、業務の棚卸しから始めるべきだと思います。

たとえば、その企業のコールセンターにはお客様からどのような内容の質問が多く寄せられるのかとか、それに応えるためにオペレーターはどのようなアクションを取っているのかとか、それが明確になればAIの使い方がおのずと導かれる。

質問内容によっては、お客様に商品の画像を撮って送ってもらえばbotで対応できるかもしれない。ですから、業務側の人間とIT側の人間の間にギャップを作らず、スムーズに知見を共有できる仕組みを作ることが大切だと思いますね。

藤井

私が最近強く関心を持っているのは、インターフェイスとしてのAI。すなわちシステムにつながる「目」や「耳」の部分がAIで代替された時、何が起こるだろうかということを考えています。

スマートスピーカーなどはまさにそうですし、これまで世間が当たり前だと思っていたインターフェイスの常識がガラッと変わってしまうかもしれない。

いまこのタイミングで、AIとクラウドを使って「目」と「耳」の領域で何かビジネスを立ち上げれば、すごく面白いことができるんじゃないかと思いますね。

及川

あと、お二方が何か興味を持っていらっしゃるテクノロジー領域はありますか?

藤井

私は「IoTとネットワークのクラウド化は確実にやってくる」と思っています。モノ同士が本当に情報をやりとりする時代が訪れる。

ちょうどLPWAなどのテクノロジーも本格的に立ち上がりますし、IoTのデバイスがわざわざwi-fi経由、ホームゲートウェイ経由、プロキシ経由でインターネットに繋ぐ必要がなくなる。しかも、一台で簡単に電池で動くようなデバイスが現れた時、どんなビジネスができるだろうかと。

及川

それは私もすごく思います。そうなるとアーキテクチャ設計がさらに複雑になり、サービスを実現するまでの技術的ハードルがいっそう高くなる。

私は自動車業界ともおつきあいがあるのですが、次世代のコネクテッドカーというのはまさにIoTのデバイス。その開発現場では、いわゆるモノづくりを究めてきた製造業の技術者と、ICTの世界にいる技術者のプロトコルが全然合わなくて。それが結構大きな問題になっているんですね。その間に立つインタープリター的な存在を、いま凄く必要としていると。

藤井

製造業の方々がITやクラウドやネットワークを学ばなければ、もはや次の製品を創れなくなる、というのはまさにおっしゃる通りで、そんな時代がすぐそこまでやってきていると思いますね。

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