INTERVIEW

INTERVIEW 016

2021 Jun 09

個人やスモールチームをエンパワーメントするプロダクトを創り、誰もがインターネットで成功するためのプラットフォームを築く。

PROFILE

BASE株式会社 執行役員VP of Product 神宮司 誠仁 氏

1992年生まれ、東京都出身。10代で「おつかい」をするWebサービスを運営開始。2013年12月にBASE株式会社に入社。ショッピングアプリ「BASE」のPMとして「BASEライブ」をはじめとする販促機能開発やコンテンツ企画に従事、2018年4月よりネットショップ作成サービスを含める「BASE」全体のPMを経て、同年6月に同社執行役員に就任。2019年7月よりVP of Productとしてプロダクトのさらなる成長や文化形成をリードしている。

SMBに向けてネットショップを簡単に作成できるサービスを展開。

及川

まずは御社が手がける事業やサービスについて簡単にご紹介いただけますか。

神宮司

BASEは2012年に創業し、現在は3社によるグループを構成して約170名の社員を抱えています。

メインのプロダクトは社名にも掲げる「BASE」であり、これは誰でも簡単にネットショップが作れるサービス。対象としているコアユーザーは、SMB(Small and Medium Business)と呼ばれる小規模のビジネスを営む個人や企業の方々です。

及川

神宮司さんのご経歴についても教えていただけますか。

神宮司

私はかつて代表の鶴岡(裕太氏)とシェアハウスで一緒に生活していました。当時はまだ鶴岡がBASEを起ち上げる前でしたが、二人ともインターネットプロダクトが好きで、海外のスタートアップのサービスに触れながらあれこれ議論する日々を過ごしていました。

そしてしばらくして鶴岡がBASEを創業し、私はメガベンチャーに入社。ソーシャルゲームの運用などに携わりながら、個人的にプロダクトの開発に取り組んでいたのですが、それが空中分解してしまって今後の身の振り方を考えていたところでした。

そんな中、鶴岡に「何でもやるのでなにか自分にできる仕事はないですか?」と連絡したところ、カスタマーサポートの仕事があるとのことで、BASEが設立されて1年後の2013年に入社しました。

及川

BASEに入社後は、どんな業務に携わってこられたのでしょうか。

神宮司

当初はカスタマーサポートを担っていましたが、多少コードが書けたこともあって、社内からの依頼を受けてキャンペーンページの制作などにも関わるようになりました。当時はまだ社員数が10名にも満たず、とにかく人手が足りなかったんですね。

そのうち、サイトの機能やUIを考えて実装するフロントエンドエンジニアとしての役割がメインとなり、徐々にプロダクトの開発にも携わるようになって、2016年からショッピングアプリ「BASE」のプロダクトマネージャー(PdM)、2018年4月からはネットショップ作成サービスを含めたEコマースプラットフォーム「BASE」全体のPdMに、現在はVP of Productという役割を務めています。

2016年頃はPdMが私一人という状況でしたが、次第にプロダクトマネジメントを担うメンバーが増えてきたので、いまはプロダクト全体の戦略設計や組織づくりを担っています。

及川

神宮司さんがPdMに就く前は、どのような体制でプロダクトを開発されていたのでしょうか。

神宮司

それまでは鶴岡がすべてプロダクトの企画からリリース、運用までを手がけていました。彼からPdMのポジションをゆるやかに移譲され、私がプロダクト開発全体を率いるようになったのは3~4年前からです。

及川

スタートアップの場合、まず創業者がPdMになってサービスを世の中に送り出し、組織が大きくなるにつれて社内にPdMというポジションが確立されていくケースが多いと思います。

PdMとしてキャリアアップを考える方のなかには、創業まもないスタートアップに参画し、創業者からPdMのポジションを引き継いで存分に力をふるってみたいという人もいらっしゃいます。

神宮司さんはまさにそうした境遇だったわけですが、鶴岡さんからPdMの役割を移譲されるにあたって苦労されたことはありますか。

神宮司

私自身は、幸いにも鶴岡と同じような価値観を持っていたのでそれほど苦労することはありませんでしたが、おそらく一般論で言うと、CEOとPdMの発言内容が異なるとメンバーが当惑するので、お互いの意思をすり合わせておくことが大切だと思います。

そしてメンバーに伝える際にも、CEOが言うことを鵜呑みにするのではなく、自分できちんと咀嚼して腹落ちした上で発言することが重要であり、その言語化能力は磨いておいたほうがいいと思いますね。

実現したいのは、個人やスモールチームの方々が主役になる世界。

及川

御社が手がけているような、ネットショップを簡単に作成きるサービスは他にも存在します。「BASE」は競合と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

神宮司

私たちが提供するサービスは、SMBのなかでも個人やスモールチームにフォーカスしており、それは競合と異なる一番のポイントだと思います。

及川

そうした思想は社内できちんと共有されているんでしょうか。

神宮司

私たちはSMBの方々の力になりたいと「BASE」を起ち上げましたが、当時はSMBと言ってもオーナーズという言葉で表せるほど、ユーザー解像度が高い状態ではありませんでした。

SMBというと世の中では中堅・中小企業を指しますが、そうした企業が私たちのユーザーだというのは少し違和感があった。私たちが向き合っているのは、もうちょっと違う属性の方々なんじゃないかと。

そこで私たちのプロダクトのユーザーを、自分たちが好きなことをして生きていこうとしている、そしてそこでその人たちなりの生き方を実現したいと願う、そんな個人やスモールチームだと言語化を試みたんですね。それを明確にしたことで、メンバー間で同じ志が共有され、組織もうまく回り始めたように感じています。

及川

「BASE」が対象とするユーザーをきちんと言語化することで、プロダクトが進むべき方向が明確になったと。

神宮司

はい。世の中の流れもBASEのプロダクトを後押ししているように思います。10年前は、個人やスモールチームの方が主役になる未来は想像しにくかった。

ネットショッピングといえば巨大なモールを利用するのが一般的で、個人やスモールチームのネットショップは埋もれてしまい、そこで商品を買う人はほとんどいませんでした。

しかし、いまはSNSで絶えず情報が行き交い、インスタグラムやツイッターでネットショップを見つけて買い物するのも当たり前になってきました。まさに我々がかなえたい世界が現実になりつつあります。

及川

そのBASEの思想は私もたいへん共感できますが、一方でユーザーの事業が成長し、御社が支援したい個人やスモールチームのユーザー像にあてはまらなくなるケースもあるかと思います。その場合、「BASE」から卒業していただくことになるのでしょうか。

神宮司

数年前まで、とても小規模で販売する商品が10個前後の方が私たちの主な対象だと考えていましたので、商品が100個あり月商数億円を上げるようなショップオーナーは私たちのプラットフォームには適さないと考えていました。

しかし、規模が少しづつ大きくなっていく方々と接していくうちに徐々に考え方が変わってきて、せっかくネットショップを始める時に「BASE」というプラットフォームを選んでいただいたのに、規模が大きくなったからといって移転コストを強いて他のプラットフォームに移ってもらうのは、私たちのエゴなのではないかと。ショップオーナーの方々もできれば同じサービスを使い続けられるほうが運用面などで負担が少ないでしょうし、そこに私たちも寄り添っていくべきだと思っています。

ただ、仮に大規模なアパレル企業から「BASE」と自社倉庫をAPI連携させてこのサービスを使いたいという要望があったとしても、そこに応えるようなことはしません。GMV(流通取引総額)を考えれば、対応すべきと思われるかもしれませんが、それは私たちが掲げる個人やスモールチームをエンパワーするというミッションと乖離するからです。

プラットフォーマーであることを強く意識してプロダクトを開発。

及川

では、現在のBASEのプロダクトの開発体制について教えてください。

神宮司

大きく4つの組織に分かれています。サービスのブランドを維持・発展させるチーム、SMBのショップオーナーの方々に向けたプロダクトを作るチーム、そのショップの商品を購入される方々に向けたプロダクトを作るチーム、そしてエンジニアのチームです。

この4つのチームが互いにコミュニケーションを取りながらプロダクト開発を進めています。

及川

御社ではPdMを何人抱えていらっしゃるのでしょうか。

神宮司

私の直下にPdMをマネジメントするメンバーがいて、その下にPdMが約10名います。それぞれショップオーナー向けのプロダクトを担当するPdMと、購入者向けのプロダクトを担当するPdMに分かれています。

及川

プロダクトに新しい機能を加える際、どのような形で企画が生まれて実装されていくのか、典型的な流れを教えていただけますか。

神宮司

プロダクトの企画については、ユーザーから直接要望をいただいているものと、事業戦略上取り組むべきものの二つの側面から行っています。ユーザーからの要望は、そのインパクトを計って優先順位をつけて開発しています。

戦略上必要な開発は、他のタスクにリソースが削られないように小さなチームを作り、既存のサービス開発から隔離して進めています。

そうして二つのアプローチから大枠で方向性が決まると、プロジェクトを組成してPdMが課題を詰め、エンジニアやデザイナーと連携して開発をディレクションし、リリースまで運んでいく形です。

及川

その際、御社のPdMは技術面にどこまで関与されているのでしょうか。

神宮司

各プロジェクトにエンジニアの中から開発責任者を置き、詳細な仕様についてはPdMではなく彼らが担保しています。全体のプロジェクトマネジメントはPdMが担い、開発責任者と両輪でプロジェクトを推進していく感じですね。

及川

もうひとつ、御社のPdMは事業責任をどこまで負うのでしょうか。売上の数字に対する責任をそれぞれのPdMに持たせている形でしょうか。

神宮司

いえ、売上に対する責任はPdMに持たせていません。というのも、私たちのプロダクトは新しい機能をリリースしたからといって、すぐに数字にヒットするわけではありません。この機能を改善するとGMVが即効的に10%伸びるという構造ではない。

ですから、中長期でプロダクトをどうマイルストーン通りに作っていくか、顧客の要望をどう解決していくかに注力していいます。代表の鶴岡も、小さな数字の動きに左右されず、ロングタームでプロダクトを考えよう、というメッセージを常に社内へ発信しています。

及川

さきほどユーザーからのフィードバックをもとにプロダクトの開発を進めているとのお話でしたが、おそらくユーザーからは表層的な意見や抽象度の高い要望など、たくさんの声が寄せられるかと思います。どれをプロダクトに反映させるかという判断基準は、どこに置いているのでしょうか。

神宮司

まずは開発によるユーザーへの影響度合いを重要視しています。

及川

ユーザーからの要望が多いテーマであっても、「BASE」がカバーすべきスコープなのかどうかという問題もあるかと思います。それはどのように判断されていますか。

神宮司

私たちはプラットフォーマーとしてプロダクトを作るべきだという意識を強く持っています。たとえば「ファッション」とか「ハンドメイド」とか特定のジャンルの色を付けないように心がけていて、領域に特化した機能は優先するということは滅多にありません。

“Be Hopeful”であることがBASEのプロダクトマネジメントの真髄。

及川

プロダクトを企画開発するにあたって、たとえばAmazonでは完成時を想定したプレスリリースを書くことから始めるなど、独自の方法論を導入している企業もあります。BASEでは何か共通の思考法やフレームワークはありますか。

神宮司

私たちはすべて行動指針ベースで物事を判断しています。“Move Fast(速く動くこと)”“Speak Openly(率直に話すこと)”“Be Hopeful(楽観的でいること)”という3つの行動指針を掲げており、たとえばプロダクトづくりにおいては“Move Fast”“Be Hopeful”を重んじています。

“Move Fast”の観点で言えば、プロダクトの開発はリーンスタートアップであり、余計な機能を削ぎ落してユーザーにまず使っていただく、いわゆるMVP(Minimum Viable Product)の文化が創業当時から根づいています。

あとは私たちプラットフォーマーとショップオーナーが、あくまでも対等な関係でいられるかどうかを企画時に重要視しています。プラットフォーマーが権力を持つことなく、GMVを上げるためにショップオーナーの行動を制限するようなことはしないなど、パートナーとしてショップが成長してはじめて事業が成長するというビジネスモデルを維持することに注力しています。

及川

プラットフォーマーとしてあるべき姿を追求されているわけですね、そうはいっても、企業である限り収益を最大化することも求められます。どこに境界線を設けるか、その判断が難しいようにもお見受けします。

神宮司

おっしゃる通りで、そもそも「BASE」は何のために存在しているのか、誰のためにプロダクトを創っているのかを折に触れて社内で話し合い、判断が歪まないように努めています。

及川

御社ではまだまだPdMを必要とされているとのことですが、採用にあたってどのようなポイントを重視されているのでしょうか。

神宮司

大前提として、私たちがサポートしている個人やスモールチームのみなさんの生き方に共感できるかということを重視し、そこを注意深く見てコミュニケーションを取っています。そうした方々の力になるために、自分としてやりたいことがあるかどうか。そして、行動指針にも掲げる“Be Hopeful”であるかどうかということですね。

デジタルの世界では楽観的であるからこそ実現できるプロダクトがあると思っていて、インターネットでSMBの方々をエンパワーメントできる未来に対してワクワクできる人がいい。

及川

ECに関するビジネス経験の有無よりも、BASEの理念への共感を重視されているのですね。PdM未経験の人材も採用対象になるかと思いますが、その方が活躍できる人材であるかどうか、どのようにチェックされているのでしょうか。

神宮司

日頃からデジタルプロダクトに対して興味関心があるかどうかを前提に、スキル面に関しても、職務経歴書の内容の解像度を、面談の場で確認しています。

及川

それでは最後に、BASEに興味を持つPdM志望の方々に向けて、ここでプロダクトマネジメントに携わる魅力や醍醐味についてメッセージをいただけますか。

神宮司

私たちが対象としているユーザーは、けっして距離感のある遠い存在ではなく、いつでも会いに行ける方々です。ふと訪れた旅行先のネットショップが「BASE」のユーザーであったりすることも珍しくない。

そうしたユーザーの方々と直に触れて、どんなことに悩まれているのかを肌で感じ、目に見える形で支援できる。インターネットサービスは成果を数字でしか見れないことが多いのですが、私たちはユーザーへの貢献を実感することができ、それは大きな魅力だと思います。

また、すでに「BASE」でのショップ開設数は140万(取材日時点)を超え、プロダクトとしてすでに完成しつつあるイメージをお持ちかもしれません。しかし、まだまだ課題はたくさん残されています。「BASE」でネットショップを運営されているのは、90%が4人以下のSMBの方々。そもそも人手が足りず、商品の企画開発やマーケティングにまでリソースが回らないことも多い。そこにテクノロジーを介在させて生産性を上げるなど、これから取り組んでいきたいテーマは際限なくあります。

たとえばInstagramと連携して販促や集客を行う仕組みなども新たに開発しており、SMB固有の課題を知恵を絞って解き続けていくのはやりがいがあります。志を秘めた個人やスモールチームの方々に腰を据えて向き合い、みなさんが成功する力になっていくことに私自身も大いに魅力を感じていますし、BASEのミッションに共感して、こうしたチャレンジに魅力を感じる方にぜひ参加していただきたいですね。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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